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「あんなモノ、昨日までは無かったはずだ」
家族の中で最も年長であるキースが驚愕の様を見せて広大な外の世界を眺める。
私は彼の傍らからそっと隙間を覗きこみ、息をのんだ。
「な、なんなのアレは?」
知らずに震えてしまう自分の声とは裏腹に、キースは額から一筋の汗を光らせ、その口に弧を描いた。
「ふっ……敵もなかなかやるじゃないか……だが、あんなモノを建てたからと俺たちが屈する筈が無い!」
「?!」
彼の強気な発言に彼の顔を窺い見た私は一抹の不安を覚える。
「リリィ……みんなを、頼む!」
「キース!ダメよ、一人でなんか行かせられない!私も一緒に……」
「ダメだ!奴らは俺たちを全滅させたいんだ、アレが何なのか判らない以上偵察してくる必要がある。
それには単独行動が一番だろ?
……おまえに何かあっては俺が困る」
「……キース」
家族の中で誰よりも強く果敢な彼の暖かな眼差しに私は眩暈を感じてしまった。
「どうか、無事で……!」
そう願い、力強く抱き締めあった後、彼は振り返りもせず外の世界へと旅立った。
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