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───あれからどの位の時が経ったのだろう。
私たちは全滅しかけている。
敵は次々と新手の罠を仕掛け、犠牲を払いつつも私たちは注意深くそれらを看破してきたが、遂に家の中への侵攻を許してしまった。
それはいつか訪れる事だったのかもしれない……
早くこの家を棄て、新天地へと移動すれば良かったのかもしれない……
先人が築きあげたこの場所が楽園のように思えていたのかもしれない……
敵は私たちを翻弄し駆逐するべく奮起し、遂に全滅へと追い込んだ。
「無念だわ……私たちの生態を知り尽くしてくるなんて……」
私は白く霞ゆく視界の中に最期の言葉を遺した。
古来よりどんな過酷な状況だろうと乗り越え、生き永らえてきた私たちの種族は、まだまだこの世界に根強く息づいている。
たとえ私たちがここで息絶えようとも、また別の固体が新たな群れを成すだろう。
「私たちは決して屈しはしない……」
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