~出会い~

3/7
前へ
/7ページ
次へ
結果としてインテグリフォリア、アル・アジールの両軍に攻められる形となったティト達の一行は、逃げることも叶わず、防衛することが精いっぱいだった。 「ティト、このままじゃオレ達やばいぞ!」 「わかってる……っ!」 一行のひとりが、年若いリーダーを振り返って叫ぶ。 分かっている、分かってはいるが、どうやってこの状況を脱したらいいのかが分からない。 「くそ……っ、少なくともインテグリフォリアにとっては、おれ達は敵じゃねーのに……っ!」 そう叫んでも、戦場ではかき消されるだけ。 ティトは、もう何人目かなんてわからない兵士をまたひとり打ち倒しながら、自分の甘さを後悔していた。 もっと慎重に、経路を検討するべきだった。これは完全に自分のミスだ。 しかし、それを悔いても何も始まらない。 今自分がするべきなのは、自分の考えに賛同しついて来てくれた一族の皆を守って、インテグリフォリアへと無事たどりつくことだ。 「誰か……っ、誰か偉い奴はいないのかよっ! インテグリフォリアの、偉い奴はっ!」 一兵士ではない、立場のある誰か。そんな人物と話が出来れば、なんとかなるかもしれない。 けれどきっとそういう人物は、こんな最前線で雑多な戦い方はしない。少し離れたところか高みにいて、戦況を冷静に見ているはず。 だとしたら、自分達が急に入り込んだことも『違和感』として察してくれるかもしれないと、そう思ったのだ。 しかし何時まで経っても、どこを見ても、そんな人物は見当たらない。 最前線とはそういうものなのか。誰も気づいてはくれないのか。 インテグリフォリアにたどり着くことすら叶わず、自分達はこのままここで朽ちてしまうのか――そう、諦めかけた時だった。 「何をやってる! 一般人が巻き込まれているだろう!」 「え……っ」 周囲の兵士を一喝する、凛とした声が響く。 その声にティトが振り返ると、そこに在ったのは黒い影。 金色の髪を風に揺らし、ふわりと舞うように華麗に剣を振う姿。自分にはない、今までに見たこともないような美しいシルエット。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加