両片思いの中間地点

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クローンがいるってことは、オリジナルがいるってことなのよ。元から綺麗で、輝いている月みたいな女。一方あたしは同じ顔をしてるからって比較にもならないほど空っぽ。あの女に比べたらあたしなんてチーズケーキみたいなものだわ。要は同じ丸っぽいし、他人が色を塗ればそこそこ似たものが描かれる。特徴だけ拾えばカテゴライズは似てるけど、根本が違うってこと。遥か彼方の空に浮かぶ月と、コンビにで290円で売ってるチーズケーキなあたし。どう思う?この差。あたしの方が、いいと思わない?量産的で且つ、美味しいのよ?  そりゃぁさ、同じ皮の中から生まれても、不揃いな豆だってあるわ。メンデルが解き明かした法則にのっとっていえば、3:1で似つかない。どんなに頑張ってもあの女にはなれないし、追いつかないし、一生勝てない。”あの人”満足をしてもらえるような自分になれなくて、息ができないほどに、囚われる。あの女に人生を、すべて根こそぎ、囚われて雁字搦になる。桎梏の鎖を立ち消えれない。  ああもういっそ、一度死んでみようかな。誰かあたし毒リンゴを持ってきてくれないかしら。白雪姫みたいに棺桶に入って、死んだ後、王子様のキスで目覚めるの。二度目の人生は、結婚から始まるんだ。それなら悪くない。寝ているだけであたしに一目ぼれしてきた男をたぶらかすだけの人生なら、こんなに楽しいことはないでしょ?
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