両片思いの中間地点

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叫んで、叫んで、叫んで、それでも虚しいことに廊下の先の扉が開いた。足でいくら踏ん張っても体は宙を浮き、どんなに強い力で引っ掻いても”あの人”の白衣は掴めなかった。 やがて勢いよく放り出される。底がない暗闇の中に堕ちて行って、重々しい機械音の狭間で意識が途切れた。 「これもダメだ」 ”あの人”ならぬ白衣の男は、扉の鍵を閉めた後、踵を返した。癖のついた髪をかきむしりながら、来た道を戻っていく。 西暦2040年。クローン技術は今日も進歩しない。 fin.
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