停滞系男子

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停滞系男子

 雨ニモマケテ、風ニモマケテ、恋ニモマケテ……世の無情に為す術なく連敗を喫した俺は、己の住処から徒歩三分の大学に行くことができなかった。昼過ぎに起床し窓の外に目をやれば、発達した低気圧が唸りを上げている。一寸先は闇、アパートから大学までの三分間で、俺は自然の厳しさになぶられて死んでしまうかもしれない。学生にとって学業よりも優先すべき事項はないと心得ているが、それは命あってのこと。俺は学生である前に、一人の人間だ。  そして俺は一人の人間として、かわいい娘には恋人がいるという摂理に打ちのめされている。昨日、よく行く喫茶店の店員、西条さんがバイト上がりに恋人と帰路につくシーンを目撃してしまったのだ。  布団の中で夢と現を行き来していると、部屋はあっという間に暗くなった。十一月、北海道の日は短い。 「さすがに起きるか」  一大決心のもとに布団から出て、部屋の電気を点けたところでインターホンが鳴った。モニターを見てみると、日本人離れした彫りの深い顔がこちらを凝視している。  受話器をとって応対する。 「どうしたんだ、深海(しんかい)」 「電気点いてなかったぞ。お前、たった今起きたな。     
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