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「それがどうもね、ミステリアスなんだよ、一条さんは。いや、一条さんにまったく責任はないらしいんだけど」
深海は大げさに、言い淀んでみせる。
「早く言えよ。お前の発言でハラハラドキドキしたくない」
「一条さんは男とデートスポットに行くと、絶対トラブルに巻き込まれるんだ。ほら、俺らの友達にもいるじゃん、出かけたり旅行したりするとなんか面倒なことになる奴」
「たしかに、運が悪いというか、間が悪いというか、そういう奴っているよな」
「一条さんは、なんかもうそういうレベルじゃないらしい。大小あれど、必ずトラブルに巻き込まれる。今年のゴールデンウィークにさ、動物園からシマウマが逃げて大ニュースになっただろ」
「ああ、覚えてる」
「その日その動物園に、一条さんは松木さんと一緒にいたらしい。その後二人の仲が進展することはなかったそうだ」
「くだらないオカルトだな。一条さんのせいでシマウマが逃げたとでもいうのか」
「もちろん、一条さんのせいじゃない。ただ、一条さんとデートをすると、そういう理不尽な目にあうんだ。これは、彼女の周りでは周知の事実なんだと」
俺は黙って残りのビールを飲む。
「あっ、信じてないだろ!」
「信じられるか!」
「たしかな情報筋から得た情報だ!」
「お前酔ってるだろ。だからそんな口からでまかせを言うんだ」
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