紅色の彼方

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 駅に着く。足下の手をつながれた子供に注意を置きながら、脇を通り過ぎる。側では来客を待つタクシーの運転手らが煙草をふかしている。千円札を二枚機械の中に吸わせて切符と釣り銭を手に取る。この財布もずいぶんとくすんできた。名残じみた記憶を背に、磁気カードをかざして改札を抜ける。  無意識に一連の動作をこなす。意識にのぼるのはここにいるのが一人だという認識と、一人でいるのが何年経ったかということだった。過ぎてみれば付き合いに取られる時間もなく、足かせもない。それが寂しい、と形容するには時間を食いすぎている。  休日の早い時間のせいか、構内の人影もまばらだ。ここにきて生き急ぐこともなく、鈍行で目的地に向かうことにする。  しばらく佇立したままでいると、アナウンスを引き連れて電車が滑り込んでくる。視線の端に空席を見つけ、腰を下ろした。  夢見の善し悪しにすこし懸念を抱きつつも、目蓋を閉じる。開けた視界にはまた、灰色の世界が待っているだろう。
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