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暮野は残念そうに特大パフェを頼んだ。八神はそんな暮野がおかしくて思わず吹き出した。
「あ」
「……ん? 何ですか?」
「笑った顔初めて見た。かれこれ一か月ぐらい図書館通ってるけど、初めてだよ。本当に。それってよく考えると凄くない?」
「え?……そんなに僕笑ってなかったですか?」
「うん。笑顔見たことなかったよ……ねえ、もっかい笑ってみなよ」
暮野は八神の顔をじっと見つめそんな無理なことを言った。それに、そんな綺麗な顔に見つめられたら、自然に笑える自信などない。八神は緊張で顔を引きつらせた。
「いきなりそう言われても、笑えないです」
「じゃあ、どうすれば笑うの?」
「……どうすればって、考えたことないです。そんなこと」
「そんなことね~。笑うのっていいよ。凄く大事なことだと俺は思うけどね」
「はあ……」
ひどく間抜けな返事しかできない自分が嫌になる。暮野は今、ごくたまにしか笑顔を見せないような奴と一緒にいて楽しいのだろうか? また八神は自分に、カチッと自信喪失のスイッチを入れてしまう。
「分かった。じゃあ、本の話しをしよう。さっきさ、俺が借りた本三冊を食い入るように見てなかった? あれってさ、もしかして三冊とも自分の好きな本だったから?」
「え?……」
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