kureno 1

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 八神も多分同じだろう。自分と同じ。それが分かるから暮野はつい余計なことを言ってしまった。八神が馬鹿にされるのは気に食わない。自分が馬鹿にされているような気分になるからだ。それにやっぱり八神はあのままでは駄目だ。人は傷付いたまま人生を終わりにしてはいけないと思う。自分の人生を無駄にするような生き方を暮野は好まない。八神は多分誰かに傷つけられている。その弱さや、繊細さが、今の八神を作っているのかもしれないが、八神だって本当は「変わる」きっかけを求めているに違いないのだ。だったらそれを暮野が与えてやることが、今回の任務を遂行するための近道と考えてもおかしくないだろう。  あいつの名前は八神優弥。今日が早番だっていうのは既にリサーチ済みだが、何故知っているのかと不審がられるのを恐れて、わざわざ本人に確認しておいた。十七時に仕事が終わるのを待って、自分が適当に選んでおいた 今若者に人気の美容室に二人で向かっている。  暮野は今日図書館には行かず、職場に戻り与えられたこのクソのような任務の進捗状況を報告したり、施設に保管されているあれの冷凍庫を整理したりする雑用を行っていた。     
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