yagami 4

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 そんな八神の変化には、暮野の存在が大きい。人は何かきっかけさえあれば変われるのだ。それがただ前髪を切るという物理的なことでも構わない。そこから始まる変化に向き合う勇気が必要なのだということを、八神は暮野に教えられたのかもしれない。  ただ、この変化が八神にとって吉ばかりかは正直微妙だ。人は見た目が大事とは言うが、その変化のせいで、何か不穏なものを引き寄せてしまうという不本意な事実に、八神は今怯えている。  池田の八神を見る目が違うのだ。有難いことに、池田は今までは八神をゴミのように扱い、興味のきょの字も示さなかったはずなのに、事あるごとに八神に絡んでくる。返本配架作業など、普段の池田ならそんな面倒な作業は極力嫌がるのに、「手伝ってやる」などと言い、何かと八神の傍で仕事をしたがる。確かに八神は若干自意識過剰な奴ではあるが、これは明らかに違う。八神の勘違いなどでは絶対にない。  そして、何より驚きなのが、池田は八神にべたべたと触れてくるのだ。勿論。大の大人が職場で無用に体を触れ合わせる必要など全くないのに、池田はまるで体育会系の先輩後輩みたいのノリで大胆にも触れてくる。さすがに、腰に手を回された時は、小さく悲鳴を上げたほど恐ろしかった。     
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