yagami 4

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 おかしい。池田は自分とどうしたいのだろう? 自分の容姿が少し変わったことで、池田の何かを刺激するのだろうか? だとしたら、池田は自分と純粋に友達になりたいと思っているのだろうか? でも、だったらこの無用なスキンシップの意味は? 一番考えたくない選択肢だが、まさか池田は自分に性的な意味で触れているとか……。いやいや、それは無い。絶対に。だって自分たちは男同士だし、池田が自分に性的に惹かれるなど、そんなの西から日が昇るほど有り得ない。  今日も池田は八神と一緒にランチを食べようと策略している。八神はいつもおにぎりの中にウインナーや唐揚げなどを入れる手抜き弁当みたいなものを作ってくる。サラダやスープは、その日の気分でコンビニを利用して買ったりするから、外食などはしない。池田は親元居住だからか外食が多く、ランチはもっぱら職場近くの人気レストランで、お洒落に敏感なOLがいかにも選びそうなメニューを好んで食べる。  池田が、休憩時間十分前当たりから八神にちらちらと視線を寄越し、ランチに誘うタイミングを伺っているのが分かる。八神はそれに気づいてから、頑なに毎日弁当もどきを持ってきている。もちろん今日も八神の弁当はおにぎりと、コンビニで買った海藻サラダと春雨スープ。この昼飯は意地でも譲らない。池田とランチなんか絶対に行かない。 「八神君。最近オープンしたフランスの田舎料理の店、安くて美味しいらしいから、今から行かないか?」  思った通り池田は、時計の針が十二時を指すと同時に八神を誘ってきた。 「すみません。お昼持って来てるんで、大丈夫です。いつもお誘いありがとうございます」     
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