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kureno 2
八神の笑顔はやばい。すごい破壊力だ。胸を矢で射貫かれる表現をデフォルメしたマンガみたいに、その笑顔は暮野の胸を痛いくらい刺し貫く。その度に激しい動悸に襲われるものだから、恋愛において常に百戦錬磨の暮野が、かなり調子を狂わされているのは確かだ。
どんな心持ちで八神と接すればいいのか正直分からない。予測不能な八神の行動に戸惑い、そしてそれがとても新鮮でかわいいのだ。そんな純粋な感情に無縁だった暮野の恋愛に置ける百戦錬磨など、まるで役に立たないとネガティブになってしまうほど、暮野は今、八神に対して自信喪失中だ。
「暮野さん。午後の出来事……すみませんでした。僕が迂闊にあんなこと口走っちゃったから……僕、暮野さんに会えたのが嬉しくて、つい」
八神は本当に申し訳ないという顔をして暮野に謝った。その表情には照れているような様子はない、じゃあ今の言葉は何だ? 無自覚か? 暮野はどぎまぎと落ち着きなく飲み物に手を伸ばした。
「堅苦しいな。ねえ、來でいいよ」
「はい?」
「名前、下の名で呼んでよ。その方が親しみ湧くでしょ? 俺もそうするから」
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