kureno 2

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 個室と言ってもカーテンで仕切られている程度なので少し心許ないが、別に何をするわけでもないと分かっていても、変にそわそわしてしまう自分が情けない。個室というだけでどこか淫靡だし、わざとらしくムーディーな照明が余計そんな雰囲気を醸し出している。ソファーの上に並べられた数種類のクッションにもリラックス効果があり、思わず寝そべりたくなるようなくつろぎ感を演出してくれる。だからついつい気が緩み、ワインを飲むピッチが速くなる。酒に弱いわけではないから、みっともない酔っ払いにはならないが、八神を前にすると変に調子が狂う自分を、無意識に酒で誤魔化そうとしているという方が正しいのかもしれない。 「ところでさ、俺のせいで仕事に影響出たりしてない? あの池田って男、結構要注意人物な気がするんだけど」  暮野は自分の短気な性格を呪う。我が儘で自分勝手な人間が大嫌いだから、ついそんな奴を見ると我慢できなくなってしまう。今回もそうだ。いつものように怒りをストレートにぶつけてしまった。 「……ええ、まあ。あ、あの、僕の完全な勘違いかもしれないんですが、最近池田さん、僕にやたらとちょっかいを出してくるんです。昼飯や夕飯とか、しつこいくらい誘ってくるからすごく迷惑してます。絶対行きたくないから、何かと理由付けて断ってるんですが……これって何なんですかね? 前は人を、ゴミを見るような目で見てたのに……」 (なるほどな……)     
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