第3者 コンパの女王と呼ばれて

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男と入ったのは、貴船神社付近にある落ち着いた雰囲気の鮎料理のお店だった。 「申し遅れました。私、山田大樹と申します。」 「あっ、私は・・千恵子っていいます・・」初対面の人に突然フルネームを伝えるのが怖くて、下の名前だけ答える事にした。しかし、向こうはフルネームを教えてくれただけになぜか申し訳なかった。 「どうして貴船に?」 「どんなに頑張っても、婚活うまくいかなくて。だから、神社に来たんです。」 「へぇ。そうだったんですか。僕も似たようなもんです。」 「婚活ですか?」 「違います。結婚生活です。」 「えっ、結婚できるだけでも勝ち組じゃないですか?」 「結婚に、勝ちも負けもないですよ。」と言って、山田大樹は少し俯いた。なんだか申し訳ない事を言ってしまったように思えた。 結婚はゴールじゃないとは言うけど、私からすれば結婚にたどり着いただけでも勝ち組なのだ。
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