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「すみません。やっぱり潜るの辞めてもいいですか?」と私が言うと、大樹はびっくりして目を見開いた。
「どうして?折角ここまできたからには、通った方がいいんじゃないかな?だって、ずっとガムシャラに婚活しても結婚できないんでしょう?
安井金比羅宮の通り道を潜る事で、悪縁を切って前に進めるんだ。実は、僕自身も夫婦仲を拗らせた原因の悪い株を購入しないようにって思っててさ」
「ちょっと待ってください。株は、本人の勉強も必要ですよね?
それに夫婦仲が拗れた原因が必ずしも株が原因だけじゃない気がするんです。そうやって、何でも何かのせいにしてきたのがいけないんじゃないかって。
私は、婚活がダメだったのは自分のせいだと思ってます。神社に来たのは自分の背中を押すため。運命は、結局自分次第なんですよ」
と私が言うと「なんか、ごめんね。そんなつもりじゃなかったんだ。気を取り直せるように、清水寺に行こうか。ここから歩いてそう遠くないし、清水の舞台からの景色はきっと君の背中を押してくれるはず」
そう言って、大樹は私の手を引いた。きっと、私は本当は安井金比羅宮の通り道を潜るのが怖かったんだと思う。今まで出会った縁を全て悪縁と思いたくもないし、幸せになる覚悟もなかったのだ。
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