第5章 清水寺

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今更私が足掻いたところで、若い頃に好条件の男性を手に入れた女たちになど勝てる訳がない。 勿論、これも全て私の思い込みだ。私が今一生懸命頑張れば、好条件の男性と出会える事だってあるかもしれない。いや、むしろ好条件じゃなくても自分が満足できる相手と巡り会えたなら。幸せと感じるかもしれない。 しかし、この歳で今更妥協なんて出来ないのだ。「千恵子、ずっと独身頑張ってあの程度で妥協したのね」なんて思う同世代の友人はいないと思うし、むしろそんな友人なら居ない方が良い。きっと私の友人達は口を揃えて「結婚おめでとう」と心の底から祝ってくれる筈だ。 でも、天邪鬼な私は心の奥底でずっと捻くれた事を考えているのだ。女は、心の底から他の女の幸せなんて祈る訳なんか無いって。 そんな邪心を抱えながら歳をとってしまったから、私はきっとずっと独身なのだろう。ああ、もっと心が素直だった頃に何も考えずに結婚できたならどんなに幸せだっただろうか。 ぼんやり、そんな事を考えながら今日も私は何も変わらぬ明日を迎えるのだろう。
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