駄犬は一途に恋をする。

1/275
349人が本棚に入れています
本棚に追加
/275ページ

駄犬は一途に恋をする。

 そう。それは確かに一目惚れだった。  その男を一目見た瞬間、ウィリアムはその大きな躰に電流のようなものが走るのを確かに感じたのである。  世界中の客船の中でも、最高の豪華客船と名高い大型客船『Queen of the Seas (クイーン・オブ・ザ・シーズ)』。そのセキュリティースタッフたちが集う休憩室での事だ。  その日、セキュリティー部門は新しい統括を迎えていた。  シルヴァンという名の新しい統括は、三十一歳と年若いながらも組織の幹部だという噂だ。グレーの髪と瞳にフレームレスの眼鏡を掛けたその顔は、如何にも切れ者といった雰囲気を漂わせている。  実際、シルヴァンはただ経験を積むためだけにこの船へとやって来ていた。組織から告げられた任期は四年だ。  表向き伏せてある事ではあるが、この船を所有する会社の大元はフランスのマフィアである。そして、セキュリティー部門の人間は、すべてが組織の人間だった。つまりシルヴァンは、マフィアの上層部の一人という事だ。     
/275ページ

最初のコメントを投稿しよう!