駄犬は一途に恋をする。

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 ガバッと顔を上げて寝台を降りるウィリアムに、シルヴァンは苦笑を漏らす。さして時間をかけずにミネラルウォーターのボトルを携えてきたウィリアムは、両手で捧げ持ったボトルをシルヴァンの目の前に差し出した。 「ど、どうぞっ」  震える手でボトルを差し出すウィリアムに、思わず笑いが漏れるシルヴァンである。 「ウィリアム」 「は、はいっ」 「私は飲ませろと、そう言ったはずだが?」  シルヴァンの言葉に、ウィリアムは奇妙な呻きをあげながらボトルの蓋をペキペキと開ける。だが、そこで固まった。どうしていいのか分からない。 「あ…あの…、起きられ…ませんよね?」 「ああ」  短い返答に、ウィリアムがボトルとシルヴァンの顔を交互に見る。 「そ、その…背中を支えたら…起きれそうですか…?」  今にも泣きそうな顔のウィリアムを、シルヴァンの手が手招く。おずおずと膝でにじり寄ったウィリアムの首を腕で引き寄せて、シルヴァンは愉しそうに耳元に囁いた。 「お前の口で飲ませろと、そう言っている」 「シルヴァ…」  顔を真っ赤にしながらウィリアムはボトルに口をつけると、ゆっくりとシルヴァンの唇に己のそれを重ねた。ごくりと、シルヴァンの喉が上下する。  含みきれなかった透明な液体が唇の端から滴り落ちて、慌てて雫を舐め上げるウィリアムにシルヴァンはクスリと笑った。 「お前は初心なのか大胆なのか分からんな」 「あう…ごめんなさい…」     
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