8 風邪ひきとクリスマス

7/22
前へ
/37ページ
次へ
それだけに、未波としては辻上の顔が見たかった。 きちんと顔を見て話をすれば、彼は、たとえ訥弁でもちゃんと返してくれる。 そんな会話が恋しかった。 抱きしめてくれた時の温もりを、また感じたかった。 そして、また彼のピアノが聞きたかった。 しかしこれだけは、彼の資格試験が終わるまでは、自分からは絶対に言えない。 そうなることは承知していても、未波は、彼と付き合いたかったのだから。 だが、この手の付き合いは、理性と本音は完璧に別方向を向く。 そして、そんな付き合いを始めて、ひと月足らず。 初めてのカップルイベントとなる、クリスマスを迎える月へと突入した。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

36人が本棚に入れています
本棚に追加