36人が本棚に入れています
本棚に追加
「あっ、未波ちゃん!」
駆け込み時間よりも少しだけ早く行ったため、
まだ行列もない、やや閑散とした部屋の中で、
真っ先に未波を見付けた絹矢の嬉しげな声が上がる。
「久しぶり。智樹くん、元気?」
だが、こんな言葉を掛けながら、未波の目は辻上の姿を探していた。
しかし、もう松本の姿がないのは当然だが、恋しい恋人の姿も
そこには見当たらない。
だから「忘年会、楽しみだね」とはしゃぐ絹矢に、未波は思わず尋ねていた。
「うん、楽しみね。ところで、今日は4人なの? 辻上さんは?」
そして、あっけらかんとした絹矢の答えに、未波のほうが思わず固まった。
「お休み。風邪ひいちゃったんだって」
なんですって?!
飛び出しそうになった言葉を、未波は慌てて呑み込んだ。
最初のコメントを投稿しよう!