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「でも私、こうやってピアノを聞かせてくれるのも、
この前みたいに一緒に水族館へ行くだけでも、楽しいですよ?」
キョトンとして言った未波を、辻上は、黙ったまま少しだけ見詰めた。
そして、フッと淡く笑う。
「アンタ、変わってるな」
その辻上の笑顔に釣られるように、未波も小さく口元に笑みを広げた。
「米倉未波です」
えっ?
戸惑い顔の辻上が、ちょっと言葉を呑む。
だから未波は、更に笑みを広げた。
「私、『アンタ』じゃなくて、米倉未波です」
目の前の辻上の顔が、ハッとしたように小さく目を見開いた。
そして、
「米倉、未波」
はい。
微笑んで頷いた途端、未波は、初めて柔らかく笑う辻上の笑顔を見た。
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