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メリッサはまず、
(どうして子供がこんなところに一人でいるのかしら?)
と不思議に思った。
周りを木立に囲まれた地面が剥き出しの馬車道である。
ましてメリッサをここに連れてきた使用人の言葉を信じるなら一番近い村でもまだずいぶんと先のはずで。
迷子にしても不自然だと思った。
子供は年の頃は8才くらい。
痩せこけていて、あちこち擦りきれた麻のチュニックとズボン。黄土色の髪はしばらく洗っていないのだろう薄汚れべたついている。
メリッサは子供に歩み寄ると、
「どうしたの?」
と声をかけた。
俯いて泣いていた子供はメリッサが近付いて来ていたのに気付いていなかった。
そのためびっくりして顔を上げるとその勢いで「わあ!」と言って後ろにひっくり返った。
ペタン、と尻餅を着く。
「……ごめんなさい。驚かせて、あらあなた膝に怪我をしているのね」
メリッサは慌てて謝った後に、子供が膝を酷く擦りむいて血を流していることに気が付いた。
そのまま放置していたのだろう。
その傷は土や小石がこびりついて赤黒く腫れている。
元から擦れて薄くなっていたズボンは破れて怪我をした膝小僧を露出させていた。
よく見ると両の掌にも擦り傷ができている。
こけたときに手と膝をついたのだろう。
「ちょっと待ってて」
メリッサは子供に声をかけると、「よいしょっと」と背に負った巨大な薬箱を地面に降ろした。
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