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「お前がこのマリエラにしたことはわかっているのだ!私は断じてお前のような女とは結婚しない!私、ヘルト・アルバッハは今この場でメリッサ・ドヴァンとの婚約破棄を宣言する。気味の悪い魔女め!」
突然の展開にメリッサは目を丸くして、ただ一言。
「……はあ」
と応えた。
この日はメリッサの17才の誕生日だった。
メリッサは伯爵令嬢である。
そしてこの場はメリッサの誕生パーティーであると同時に結婚式の日取りを発表するはずの場だった。
この日からちょうど一月後の同日。
メリッサは花嫁になるはずだった。
メリッサの住むこの国、アルバッハの貴族は結婚の一年前に正式な婚約発表をし、一月前に結婚式の日取りを発表する。
出会ってすぐに電撃結婚というのはない。
というか許されない。
必ず婚約してから一年間の期間を設け、その後女性は婚約者の家に住み、一月間白い結婚をし、一年と一月後に正式な夫婦となる。
メリッサもしきたりに従って明日には王宮内にある第三王子の離宮に移るはずだった。
「ごめんなさい。お姉様」
ーーこんなはずじゃなかったの。
と、しおらしく俯きながらも婚約者である第三王子ーーヘルトの傍らに寄り添うのは腹違いの一つ違いの妹。
貴族の令嬢だというのに常に庭で土をいじり、でなければ部屋に込もって怪しげな書物を読み漁り如何わしい香りを漂わせる。
そんな変わり者と評判のメリッサを、家族でも唯一理解者であり味方になってくれていたのが目の前の妹だった。
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