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「この町の最高の雪景色スポットってどこさ?」
「それはな、模造の塔の屋上だ。あそこから見下ろす町一面の雪景色はマジですごい」
聞き慣れない単語を耳にする。
「模造の塔って何?」
「そうか、優希は高校から編入でこの町に来たんだったな。ローカルな呼び方とか知らないか。アレだ」
言って、理子は椅子を片手に持ちかえ、空いた手で遠方に映る二つに並んだビルディングを指さす。
そのビルディングは僕も知っている。どちらかというと住宅地よりに位置する葉明学園からそう遠くない、市街地と住宅地との境目辺りにそびえている、非常に目に付く「つがい」のビルディングだ。なんだ、この町のシンボルとも言えるヤツじゃないか。
「ええと、ツインタワーのこと?」
「一般的にはそう言うな。だが、ローカルな呼び名だと、ここから見て右側のビルディングを『既存の塔』、左側のビルディングを『模造の塔』と呼んでいる」
なるほど、同じような外見のビルディングなものだから、僕の中では「ツインタワー」と一括りにされていたのだけれど、どうやらビルディングにも個性があり、各々に名前があったらしい。確かに、顔がそっくりな双子がいたとして、いつまでも「双子さん」と二人一括りで呼び続けるわけにはいかないだろう。個体を識別する名前は大事だ。
「しかし随分詩的な名前だね」
それはな、と前置きして理子が解説してくれる。
「『既存の塔』が建設されたのが五年前、『模造の塔』が建設されたのが三年前だ。二つのビルディングは外見も中身も構造が全て同じ。もともとあった『既存の塔』をすっかりそのまま真似て、『模造の塔』は作られたんだ」
「ああ、それで『既存』と『模造』な訳か」
一人、納得する。あらゆるモノの名前に、なんらかの由来があるものだと感心する。
「それだけじゃない。優希は――Life is like a Parody.の事件は知っているか?」
――Life is like a Parody. ……?
「生は模造でできている?」
無い英語力で咄嗟に訳す。ちょっと、意訳が過ぎるだろうか。
「知らないんだな。それはな、いや待て」
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