第1節「咲くとわびつるさくら花」

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「何の話をしていたっけ? まあ、とりあえず作業を終わらせてしまってからにしよう」  そう、この日の僕らの作業は、この哲学研究会の部室を、僕ら好みに、というか主に理子好みにデコレートすることだ。 「哲学研究会」は去年で最後の部員が去ってしまってから、現在は活動を休止している。そこに、晴れて理子と僕が入部して、部室を譲り受けたという訳だ。ちなみに顧問は菖蒲さんだったりもする。  でも、もちろん、それは建前。 「ここが、私達の教会になるわけだな」  そう言って理子が扉を開ける。  そう、僕としては哲学と宗教の原理的な区別も今イチついていないので、これが不謹慎なことなのかそうでもないのかあまり実感が持てていないのだけど、今日から、僕たちは哲学研究会を装った新興宗教組織としての活動を開始する。目的は、「この世でもっとも確かなもの」を探すこと。  先に扉をくぐって中に入っていってしまった理子を追って、僕もソファを抱えたまま部室、改め教会の中に入る。  扉をくぐった時、そういえばさっきのお話の『既存』と『模造』は、いったいどっちが「確かなもの」だったのだろう。そんな疑問が、フと頭を過ぎった。
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