第3節「関係性の名前」

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第3節「関係性の名前」

  /2 「りーこちゃん」  あくる日、理子と二人で学園の学食に向かっている途中の廊下で、後ろから男の人に声をかけられた。いや、正確には僕ではなく、理子が声をかけられた。  二人同時に振り向くと、そこにはグレーの品のいいスーツに身を包んだ青年が一人。いや、青年というにはまだ顔に幼さを残している。ただ、とっさに僕よりも二、三歳年上の人かな、という印象を受けた。 「リューシ?」  その青年を見て、理子が返事を返す。先ほど名前で呼びかけられたことといい、理子とこのリューシさんは知り合いであるようだ。 「お前、学校に来ることなんてあるんだな」  理子が、年上の人に対しては随分と尊大な態度で口にする。 「あははー、それはヒドイなぁ。俺もまだまだ学生のつもりなんだけど」  陽気に答えるリューシさんは、髪の毛は金髪で、長い前髪を乱している。初対面の人間の見た目をいきなり相対評価するのは失礼な気もするけれど、同性の僕からみても随分と女性的な美しさを持った男の人だ。 「葉明学園の生徒の方なんですか?」  それにしては幾分年上の方に見える。葉明学園には在籍するのに年齢が関係ない、夜間の定時制の部もあるから、そちらの人かな? という意味合いで聞いてみる。 「ああ、見えないだろ」  僕の問いかけに、リューシさんの代わりに理子が答える。 「こいつ、既に二つダブってるんだ」  僕はハッとして、自分の失礼な想像を悔いる。中学じゃないんだ、そういう人がいてもおかしくない。 「定時制じゃないぞ。私達と同じ通常の学科の三年生だ。今年で三年生を三年目に突入というすごいヤツだ。なんだ、お前、葉明学園の三年生を極めることに何か特殊な価値観でも見出してるのか?」 「あはは、久しぶりなのに理子ちゃんは辛辣だなぁ」  僕としてもハラハラするような理子の口ぶりに対して、さして気にする様子もなく、目を細めてリューシさんは笑顔で応対してくる。
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