お前が鳥になれ

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 やがて別れの時が来る。いつかは分からないが、それはすぐ側まで忍び寄っている。  阿比留が思わぬ形で拾ってきた金属片は、可為武には「生活」のまねごとをしながら漠然と感じていた破局の予感の、動かぬ証拠のようなものになった。 「友達」とも、「田」とも、「村」とも、あるいは「弥兵衛」とも……、可為武が彼らの近くの木に括り付けられているような生活から、突如離別を宣告される未来がそのうちやって来る。  弥兵衛は彼を追い出すと言ったわけではなく、もし戦がこの近くまで来たら、すぐ逃げられるだけの準備をしておけ、ということを言っただけだった。しかし、元々自分のみが現在の生活から追放されるような予感のあった可為武にとっては、近づいている戦も村全体を覆うというより、矢じりの先が一点めがけて飛ぶように、ただ一人自分をめがけて近づいているように感じられて仕方なかった。 「阿比留、こっちへ」と彼はよく飼い鳴らした獣を呼ぶように、この口を利かない弟を呼んだ。 「僕がいい物をあげるから来てごらん、」     
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