お前が鳥になれ

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 弥兵衛の暮らしは、村の他の人々とは少し違っていた。可為武は庇護されてから、そのことを次第に感じるようになった。村の子供たちの遊びに加わろうとしても、彼が弥兵衛の所の子供だと分かると、子供たちは忌避して逃げ散ってしまう。また彼らは若い父母と暮らしていて、また彼らの家族は田植えをしたり、畑を耕したり、機織りをしたり、塩を作ったりしていた。そして彼らの父や兄は、時折役人に連れていかれて二度と戻らなかったりする。男はたびたび、役人が甕に入れて持ってくる小石に変わる。女たちは石や甕を抱いて泣く。  そうした生活の歯車の軋む音が、弥兵衛の小屋に戻るとまるでなかった。まるで小屋のなかには太陽の光が浸透しないかのようにいつも静かだった。弥兵衛は朝、まだ暗いうちから出かけていき、どこへともなく消える。そして日が沈む頃に戻ってきて、やや高くなっている彼の座に座る。彼は柿色の頬に手を当てたままそうして動かない。ふと立ち上がって思い出したように子供たちに食事をくれたりする他は、まるで木石に化ったように動かず、また彼自身は食事というものをしない。眠る時も、子供たちは藁の下に寝かせるが、自分は例の思案するような姿勢のまま、座ったまま朝を迎えている。  また、時には彼の外出は数日に及ぶ場合もあった。しかし彼の小屋には、子供たちが食べる用の穀物がたっぷりと備蓄されており、彼らが飢えるということはない。可為武はそういう時は、なるべく阿比留を長く眠らせておき、自分は水瓶の水を少しずつ飲み、ドングリの殻をいつまでもしゃぶって待った。     
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