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青見は飴を取り出すと、口に放り入れた。口の中で飴を転がして、スマートフォンを弄り始める。彼が冷静なのは、口調でわかった。
「適当に捨てられたのは同じじゃないか。ま、アンタが愛されなかったのは当然だけどな」
洸野が吐き捨てる。スマートフォンを持つ手が動きを止め、青見の嫌みったらしい笑みが消えた。
「オマエになにがわかるっていうんだ」
「誰にも愛されない性格してんだって、すぐわかったっての」
見下す表情で笑った洸野に、獰猛な眼差しが突き刺さる。
「…ずいぶんな物言いをするじゃないか」
あっと思ったときには、組み伏せられていた。両腕を頭の上でまとめられ、身動きができない。膝を足で割られ、何が起こるか洸野にもわかった。
「な…っ、何考えてんだよっ。やめろっ」
「何考えてるか、教えてやるよ」
青見は飴を紙に吐き出し、それを床に放り捨てた。揶揄するように笑っている。男に覆いかぶさられる恐怖に、洸野は身をよじった。背の下でシーツが擦れる。
「俺は男もイケる口でな。オマエも女はこれで見限る気持ちになるかもしれないぞ」 囁いた唇が、耳朶に触れる。舌を差し込み、ぴちゃりと音を立てた。洸野の背が、ぞくりと泡立った。
反射的に身体が丸まる。膝で押し返す身体は、厚い壁のようにびくともしない。
洸野は恐慌を来たし、叫び出しそうになった。ひっ、と息を飲み、唇を噛む。
人に知られたい状況ではない。
震え出す身体に、なんとか力を入れ、暴れ、もがく。
舌打ちをした男の背が盛り上がり、さらに強く両腕を押さえこまれる。片膝を洸野の身体に乗せ、体重をかけてくる。
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