最悪の出会い

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「はう…っ、あ、あ…っ」  屹立を扱く青見の手は、強弱をつけて巧みに絞ってくる。爪先を丸めて堪えようとすれば、指は裏筋を辿って促し、洸野に嬌声を上げさせる。耳を覆いたくなるような自分の甘い声に、洸野は慄く。だが、止めることもできない。嫌々をするように首を振るだけだ。  瞬いて涙を落とした目が、青見の目と合う。その目に欲情を見つけて、洸野は顔を逸らした。恐ろしいのに身体はより熱を帯び、昇りつめようとする。心が欲望に溶かされ、何も考えられなくなる。のたうつ身体が求めるままに、いきついてしまいたくなる。  快楽に震える洸野の耳に唇をつけ、青見が艶めいた声で囁いた。 「イけ」  耳に触れた熱い呼気にさえ感じて、洸野の意地が砕ける。屹立の先に爪を立てられ、洸野の腰が浮いた。 「ああ…っ、あ…っ」  全身を戦慄かせ、洸野は達した。甘い悲鳴が喉奥から上がる。目の前が白く霞み、どっと汗が噴き出す。あまりに重い快感が身体を突き抜け、洸野の胸が上下する。酸素が欲しかった。 けれど荒い息はすぐに塞がれて、苦しくなる。首を振っても逃れられず、舌が柔らかくねっとりしたものに包みこまれ、背がびくびくと震えた。唇は熱くなるほど吸われ、身体の芯に残る火種を呼び覚まそうと蠢くものに嬲られる。飴の甘い香りが移り、洸野は陶然となった。  抵抗する気力は尽きて、されるがままに貪られる。  唇が離れ、拘束がなくなっても、洸野は指一本動かせなかった。快感を引きずり出された身体は怠く、重力を強く感じた。 「俺の番だ…」  不穏な空気を感じても、洸野は動けなかった。頭の奥の痺れは強烈な眠気を呼んで、震えた目蓋が重くなる。思考も何もかも奪われ、急速に意識が遠退く。  洸野は深い眠りに落ちていった。
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