惑う心で進むなら

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 雪交じりの雨が降る東京は寒く、人々の白い息が混じり、けぶる。シャリ、と微かに音を立てて、靴の下で雪が消える。その音を足で感じながら、洸野は慎重かつ急いで歩いていた。  道は滑りやすくなっている。転んではいけないと思うのに、気が急いて仕方がない。待ち合わせの時間までは間があるのに、会いたい気持ちが洸野の足を走らせようとする。  鹿角から東京に戻って、一週間が経っていた。青見は溜めに溜めた仕事に忙殺されていた。それも昨日でなんとか一区切りついたと言う。LINEがあって、週末の今日、青見の部屋で会える事になった。  LINEを少しした程度で、会うのは鹿角以来だ。告白しに行った鹿角での出来事を思い出して、洸野の頬が熱くなる。告白した途端、抱かれてしまい、ひどく乱れた自分が恥ずかしかった。  そうさせた張本人の頬をつねりあげてやれば良かったと思わないではないが、結局、求められて嬉しい気持ちがあるから、対応は甘くなる。翌日乗車した新幹線では、腰の奥を中心に全身が痛くてたまったものではなかったから、青見を睨みつけはした。もっとも、青見は満足そうな顔のままで、甲斐甲斐しく洸野の世話を焼き、アパートまで送ってくれたのだから、洸野はそれ以上の文句をぐっと飲みこんだ。  今日も同じようにされたら、身体がもたない。でも一週間ぶりだ。  快楽を覚えた洸野にとっては、ジレンマを生む問題だった。 「洸野?」  突然に声をかけられて、洸野は飛び上がった。振り返ると、青見が立っている。
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