結晶探し

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「ほらよ」  青見が、書類をざっとまとめて突き出す。口角を引き下げて、洸野は受け取った。斜めに傾いた字が書きこまれた書類を、一つ一つ確認する。  おもに書きいれられているのは、疑問点だ。なんで俺を使いたいのか、という文が大きく書かれ、二重丸がついている。  ここが決め所だ。  洸野は背筋を伸ばし、深く息を吸いこんだ。 「青見さんに何故依頼するか、ですが」  来る時に購入しておいた雑誌を鞄から取り出し、洸野は青見に示した。青見が手に取り、ぱらぱらと捲る。 「なんだこりゃ」  目を剥いた青見に、洸野は手を伸ばしてページを開いて見せた。 「当社の『ティーン・ビー』は小学生向けのファッション雑誌です。そういった雑誌は他社にもありますが、『ティーン・ビー』は小悪魔チックな洋服を紹介する一方で、教育的な配慮もしています。効率的な勉強法を載せるとか、ですね。そこが特色なんです」 「また敬語かよ」  くすりと笑いながらも、青見は馬鹿にしたふうではない。真剣に耳を傾けている。 「なんでそういう特色なんだ?」 「雑誌を手に取る親御さんの心も、ターゲットにしているからです。少女達はお小遣いで雑誌を買ってくれますが、そのお小遣いを与えるのは親です。実際に購入する少女の心を引きつける魅力を持ちながら、親の選択眼に叶う必要があるからです」 「二兎を追ってるわけだ」  青見が雑誌の目次を目で辿る。『今注目の学校、裏話』のページを開いて読み始める。
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