惑う心で進むなら

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 最悪の出会いから、鹿角で過ごした日々、離れようとしたこと、鹿角での再会。  二人が今、ここに二人でいる。そうなるまでに、様々なことがあって、誤解を経て、自分なりの道を歩いて、やっと。青見の目には、諦めなかった洸野への感謝さえ、窺えた。  洸野の胸にも、青見への感謝がある。結晶になる、という事を教えてくれたのは、青見だ。それを目指して、洸野は決断し、行動できたのだ。  自分という結晶になるのは、ひどく難しい。自分なりに自分が選んだ道を進んで初めて、自分らしい結晶になれる。今はまだ、結晶になる前の、氷晶かも知れない。六角プリズムであるそれが成長して初めて、煌めく結晶になる。煌めくことを信じて進むから、成長するから、結晶になれるのだ。  それを教えてくれたのは、全て青見だ。  青見がそっと洸野の肩を抱いた。促し、窓を閉じる。  二人は無言で、ソファに寄り添った。しばらくして、青見が口を開いた。 「オマエが、俺を諦めないでくれて、良かった…」 「青見さん、ヘタレだからね。俺が、しっかりしなきゃ」  青見がくすりと笑う。笑んだ洸野の唇を求めて、そっと降りてくる。洸野はもちろん、避けなかった。  結晶になった自分を溶かすことができるのは、青見の熱だけだ。それを知っている身体が、疼き始める。  蕩かされても、自分で自分の道を選び進む限り、青見が側にいる限り、再び綺麗な結晶になれる。もうその確信が洸野にはある。  ヘタレな男を促すように、洸野は青見の背に腕を回した。
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