八柱の家

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        1    帰宅の通勤電車に揺られていると、女子高生たちのたわいもない会話が耳にはいった。 「ねえ、バスルームのおかよさんって知ってる?」  黒いスクールリュックを背負った女の子が連れに話かけている。 「はあ?それって、トイレの花子さんのパクリ?」  スマホを操作していた少女が顔を上げた。 「違うよ。髪の毛ないおっさんが、鏡見ながら毛が欲しいって、お願いすると、長い髪の女の人が鏡から現れて、願いを叶えてくれるんだってさ」  リュックの女子高生が真面目くさった顔で話しはじめた。 「きゃはは。キモいよ、それ!で、そのあとどうなるの?」  スマホの少女は笑いながら、興味をそそられたのか、スマホの手を休めた。  私も好奇心が湧いて、なんとなく聞き耳を立てた。 「髪が欲しいですか、って尋ねるそうよ。欲しいと答えると望みを叶えましょうと言うんだけど、その代わりに人柱にされちゃうんだって」 「ふーん。断ったら?」 「呪ってやるう!て、怒鳴って消えるそうよ。でもね、そのとき風呂場の壁に、三本指の跡を残していくんだって。掃除しても消えないそうよ」 「でもあたしたちには関係ないじゃん。髪の毛いっぱいあるしい・・・」  高校生たちは、自分たちの光沢のある健康的な頭髪を撫ぜながら、けらけらと笑いあった。  しかし、すぐに笑い声は止んだ。  彼女たちと私の視線が偶然にも合ってしまったからだ。  私の頭髪は薄い・・・
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