喰われる

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「…先生…、キスして」 行為後の掠れた声で、七条は呟いた。急なおねだりに高田の動きは止まる。 「キスしてくれたら、許してあげるよ」 あからさまに高田は安堵の息をついた。「ごめんね…」と呟いて、高田はぎこちない触れるだけのキスを七条の唇に落とす。 「…やだ…。ちゃんとしたやつしろよ」 ぐっと高田のワイシャツを掴み、唇を押し付け、濡れた舌を無理やり差し込む。戸惑い気味の唇が開き、互いの舌が咥内を弄び始めた。冷めたはずの熱が、体の奥の方から一瞬にして湧き上がる。その熱情のまま高田のワイシャツの中へ指を滑らせると、ビクッと体が震えたのが分かり、七条はクッと喉を鳴らした。しかし、すぐに体を離される。互いを繋ぐ透明な糸がシーツに落ちる。 「っ、ダメだよ。怪我してるのに…」 僅かに頬を染めながらも至極真面目な顔で、高田は制止の言葉を言い放った。七条はポカンと呆気にとられ、何度か瞬きを繰り返す。そうして、しばらくしてからククッとおかしそうに笑い出した。 「はは…っ、『ケガ』?てか、先生が『ケガ』させたんじゃん。それに、さっきまで『ケガ』しててもヤッてたんだから、別に今更じゃん」 「だ、だから、だよ。こ、これ以上…痛い思いさせたくないよ…」 「はっ…」 思わず嘲るような笑いが、七条の口から漏れた。
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