一章 出会い

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薄暗いトンネルで俺はある人を追いかけていた。 その人はまるで泣き叫ぶ子供のように喚き涙を流しながら走っていた。 右手にナイフを持ち俺は笑いながらある人を追っていた。 別に彼女じゃなくても良かったのかもしれない。 動機は単純、人を殺したかった。 殺してみたかったのではなく、殺したかった。 初めてではなくこれで4度目だ。 経緯は自分にも分からない。 ただ、殺したいからだ。 殺した後は自ら警察に連絡し現行犯逮捕され身柄を拘束されまたあの監獄へと舞い戻った。 だが不思議に監獄の生活は苦ではかった。 シャバの世界に家はなく家族もいない。 それに外の世界でやりたいことも無く未練などなかった。 俺は決していかれている訳では無い。 ごく普通の脳みそで障害者でもなく精神科でも異常はなかった。 第三者には普通じゃないと言われる。 飯などろくなもんは食べたことなどなく箸の使い方も分からない。 計算の仕方や時計の見方、何一つ分からない。 生まれてからそのまま大きくなっただけの大きい赤ちゃんなのだ。 そんな俺が外の世界に出て一つだけ楽しみな事が殺人。 4人目は見ず知らずの女だったが次シャバに出された時には殺したい人がいる。 そいつは中学の時の同級生。 俺は奴に恨みも憎しみもないがただ人生で一人だけ仲良くしてくれた奴をこの手で殺したかったのだ。 そして監獄に入ってからすぐ彼から初めての手紙が届いた。 手紙の内容は一言「お前を殺す」 この一言だけ綴られていた。 その謎は永遠に明かされることは無く一年が経ち俺の刑が決まった。 この刑が決まった瞬間俺の夢も儚く散り彼の夢も同時に散った。 当然死刑が言い渡された。 人を4人も殺し精神的にも普通の俺がもう一度シャバに出て人をもう一人殺したいとは欲張り過ぎたのだ。 それから初めて訪れる恐怖に毎日毎日怯えていた。 警察官が通るたび今日なのか?と、自分に問いかけ覚悟を決めていた。 そんな生きる価値もない誰からも愛されなかった俺に神はもう一度チャンスを与えてくれる事となる。。。
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