一章 出会い

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妹の事件を担当していた柏木さんから連絡があり、宣言通り雄介は地獄へ落ちることとなる。 俺は奴が出てきた時に復讐をする為だけに地獄へ落ちたというのに死刑を宣告されたのだ。 当然の事だろうが俺は自分の手で雄介を殺したかったのだ。 一つの案で監獄に奇襲して殺すというのも考えてはいたが名案ではなく、リスクが高すぎる。 柏木さんは喜べと言ってきたが何一つ喜ぶ事は出来ずただありがた迷惑のだけだった。 そんな事を柏木さんに伝えたところで死刑が無くなるわけでも刑が変わることもなかったが俺はひとまず落ち着き今どうすべきなのかを真剣に考えていた。 当然柏木さんには俺のやっている犯罪までは耳に届いていなく証拠も何一つ残していないが今この人と会うのは危険過ぎる。 その後一緒に食事に行き体のことやお金の事など色々心配をしてもらい家まで送って貰った。 流石に今住んでいる家は犯罪の臭いしかしないので一様借りて置いた仮の街の方にある家に降ろしてもらい そこからは地下鉄に乗りバスで近くまで行きその後は歩いて帰り無事に家にありつけた。 ふと我に返ると雄介は死刑になる。 いつまでもこのグループに居てもしょうがない。 早いうちに手を引きたいが幹部にまで上り詰めた男だ。簡単には引き下がれない。 そんな自分と葛藤している時携帯に1本の着信が入り電話を見ると優人からだった。 もう1年近く連絡を無視していた。 こうなる事が分かっているのにあんな優しい人間と喋っていると身が滅ぶほどの屈辱を味わうと分かっていたからだ。 だが今回の着信は長くずっと鳴り響いていた。 渋々電話に出てみると相変わらずの優しい声で俺を心配してくれていた。 (航大丈夫か?今何してどこにいるのよ。勝手に現実逃避するのはいいけど家族には迷惑と心配かけんなよ。わかったか?) 優人の言葉に怒りは感じられなかったが心の奥底まで何かが貫いた気がして情けなかった。 辛いのは自分だけだと思い込んでいた。 不幸な人生を送っていると思っていた。 優人は俺よりも俺の家族にふさわしいとその時不意にでも感じていた。 (すまんな。近いうち顔出すわ) それだけいい電話を切り情けない自分と一日向かいあっていた。
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