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ぽんすけが抱っこされていた。
雨の日。
改札口が一つしかない
場末の古いアパート脇に捨てられていた
野良猫、ぽんすけ。
命名、私。
誰もがテキトーに呼んでいたと思う。ぽんすけは誰にでも懐いていたと思う。
でも。ぽんすけをぽんすけと呼んでいたのは私だけ。
ぽんすけのことを私は誰にも話していない。けれども大好きな猫。
野良猫、ぽんすけは
尻尾がしましまで
たぬきっぽい顔の猫。
だから私はぽんすけと呼んでいた。
「ぽんすけ」は、たぬきっぽい尻尾と、たぬきっぽい顔で、見事に「ぽんすけ」という姿をしている。
でも、猫だ。
そして私の住んでいるアパートはペット禁止だ。だから私はぽんすけと一緒には暮らせない。
ぽんすけは、この場末の古いアパートの軒下に住み着いていて、私からご飯をもらって食べている。
朝、「ぽんすけ、おはよ」
帰りには「ぽんすけ、ただいま」
朝は私のトーストとクリームチーズを
帰りには私の食パンとヨーグルトを
ぽんすけにあげるのが
私の決まりだった。
私と一緒にご飯たべるひと、ぽんすけ。
ぽんすけは
たぬきっぽい猫
ぽんすけは
私の家族だった。
でも、ぽんすけは男の人に抱っこされていた。
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