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拝啓 お父さんへ
初春の候
春風が心地よいこの頃
僕が別の国に行ってから早一年が経ちました。
父さんいかがお過ごしでしょうか。
僕はこの国で元気にやってます。
“外交官”というのはどうやらこの国ではとてもいい暮らしができる職業なようです。
まあそのかわり忙しいんだけど。
今思えばあの頃に父さんがこの職業の話をしてくれなければ僕は外の国に行けるだなんて
考えもしなかったことでしょう・・・
小学5年生になった僕はある授業を聞いて少し疑問を覚えた。
僕はこの国がおかしいんじゃないかとその話を聞いてから心の中にモヤモヤがたまっていた。
周りの皆はきっと何の変哲もなくその授業をきいているのかもしれないから話すこともできなかった。
だから僕はお父さんに聞くことにした。
「ねえ、お父さん」
「どうしたんだい?」
僕より少し歳のとった僕と同じ顔のお父さんは明るく答える。
「お父さんはこの国に生まれて幸せなの?」
「はっはっは、なにを言うかと思ったら、幸せだよ」
サイズは違うけれど僕と同じ服を着たお父さんが笑顔で答える。
「どうして、そんなことを聞くんだい?」
「学校の授業でね外の国とこの国のことを教えてもらったんだ」
「そうかー、それで?」
「それでね、僕はこの国がおかしいって思ったんだ」
「どこら辺がおかしいって思うんだい?」
「うん、この国では何もかもが平等で皆対等に同じで幸せに暮らせるんだって教えてもらったんだ。そしてこの国以外の国では皆違う顔で、皆違う服を着ていて、それで幸せな人もいれば不幸な人もいてもしかしたらその不幸がつらすぎて死んじゃう人もいるんだっていうのも教えてもらったんだだからこの国にいるのは幸せなことだって。」
「うんうん」
お父さんは頷きながら僕の話を聞いてくれる。
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