2人が本棚に入れています
本棚に追加
少し話しにくそうな人だなと思ったが一度気になってしまったらしょうがない性分なのだ。
「あのぉどうしてこんなところで頭を洗ってるんですか?冷たくないんですか?」
問いかけたが全く反応がない。
ただの屍なのだろうか。
もう一度声をかけてみることにした。
「あのぉすいま、」
「うるせえなぁ!おめえさん何なんだよ」
急にキレられ、驚くがここで引いては駄目だともう一度聞く
「なぜ、こんなところで足を洗ってるんです?」
「おめえさん俺が何なのかわからねえのか?」
「何とはなんなんでしょうか?恰好からして結構物持ちがいい方なのかと思いますね」
そう答えるとおじさんは一瞬きょとんとしその後大笑いする。
「はっはっは!!なんだおめえ!ホームレス知らねえのか」
「ホームレス?家が・・・ないんですか?」
また驚いた。家がないだなんて僕には考えられないからだ。
僕の国では家なんて皆持っているものだ。
国から普通に皆同じ大きさの家を支給される。
「そうだよ、俺には家がねえだからこうして公園の水道使って頭を洗ってるんだよ」
僕には衝撃的だった。そして考える。
家がないとはどういうことなんだろう。
家がないということは雨風を凌げないということだ。
家がないということは自分の場所がないということだ。
家がないということはこの国で暮らすために必要な金がないということだ。
とてもつらいことなのだと思った僕の住んでいた国ではとてもじゃないが考えられなかった、家がないなんていう状況はないのだから。
「あの、もしよろしければ僕の家のシャワー使いませんか?」
おじさんは警戒した顔をする。
「おめえさん、何考えてる?俺はなにも持っちゃいねえぞ」
なにを警戒しているのか僕にはわからなかった。
「大丈夫ですよおじさん騙そうとかではないですただそのままでは可哀そうですし、さあいきましょう」
僕はおじさんの腕を引っ張り連れて行こうとした。
「わかった、わかったから引っ張るなついてってやるよ」
僕はおじさんと一緒に家に帰ることにした。
一緒にと言えるかは微妙だ、なぜかおじさんは僕と30mくらいの距離を取りまるで他人のふりをするのだ、まあ他人なのだけれど。
最初のコメントを投稿しよう!