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「はい」
「なあ・・・少し俺の話を聞いてくれないか」
「いいですけど」
いったい何を話すのだろう。
「俺はよ今はこんなんでも昔はしっかりといい大学に出てたんだよ」
僕はしっかりと後藤さんの話にうなずく
「それから会社で何十年もまじめに働いてたんだが会社が急に倒産しちまってよ
それから仕事を探してたんだが歳のせいかなかなか雇ってもらえんくてなそれからはこのざまさ、夜はよく若いガキとかにもの取られたりするし寒いから安心して眠れもしねえよ」
「あの、食べ物はどうしてるんですかお金ないんですよね」
「仕事はあるさ、まあ仕事といっても公園とかに落ちてるアルミ缶を拾ってそれでなんとか生計立ててるんだ」
「苦労・・・なさってるんですね」
なんて声をかければいいかとっさに出た言葉はそれだけだった。
僕の国では仕事がなくなるなんてことはない。
言い訳かもしれないけどだからはげましの言葉などでなかった。
「まあここじゃあよくある話だ」
よくある話なのか?
この国はなんでも自分で選べる自由の国じゃあなかったのか?
僕は皆が僕と同じように暮らしていけるものだと思っていた。
僕がここにきて会った人たちも僕と同じように普通に家のある暮らしをしていたからだ。
だからこの国は僕にとってユートピアだった。
皆が自由に服を着て、好きなものを食べて、好きなことができる。
これは僕の国では出来ない。
服も、食べ物も、しまいには顔ですら皆同じなのだ。
だがどうだろう実際はそんなことなかったのだ。
金がなければなに一つ自由なんてないのだ。
自由どころか人として見られすらしないのだ。
僕はそんなことを考えながら後藤さんを見てある決断をした。
「お前さんなにか考えてるようだがありがとうよ俺はもう帰るよ」
後藤さんはそういった。帰る家などないというのに
「あの、僕いつになるかわからないけれど後藤さんを助けます!」
「ははは気持ちだけ受け取っとくよ、あとお前さんこの国の人間じゃあないだろ」
僕は思わず驚く。
「なぜ、わかったんですか?」
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