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俺の人生を、選んで生きろと。
「しばらく、あなたには会いにきません」
「うん……それでいいと思う。キヨはキヨとして、生きて」
言いながら、椎木は寂しそうな顔をする。
まったく、本当に情けないんだからと思う。自分が守ってやらなくてはと。
「選んで、迷って生きてみて、それでもやっぱりここを選びたいと思ったら、戻ってきてもいいですか?」
椎木を、まっすぐと見つめた。この青い瞳は、椎木にはどのように映っているのだろう。
「また、恋をしてもいいですか?」
鈴原清として生きていく。それでまた、この男に恋をしたなら、今度は文句を言わせない。
椎木は、キヨを見つめ返して言った。
「俺も、君に恋をするかもしれません」
顔を見合わせて、笑った。
虚構引力 終
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