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「セイ……君じゃない?」
「あなたはどう思う? まあ、一度会っただけだしね。この綺麗な顔を覚えてないの?」
「いや、顔は同じだけど……。え、だって、『セイ』じゃない……だろ?」
「正解のような正解じゃないような。まあいいか。俺は『キヨ』です。セイは二重人格で、俺はセイの副人格。保護者のようなものです」
二重人格?
聞き慣れない単語に、椎木はぽかんと口を開ける。
その間抜け面を見て、キヨと名乗った少年は溜息を吐いた。先程椎木が落としたコンビニ袋を広い、手渡してくる。
それを反射的に手を出して受け取ろうとするが、出したその手をまた握られた。
「セイを助けてください」
懇願するような声に、椎木は顔を上げる。
「セイに恋をしてください」
そう言ったキヨの顔は、昨日見た少年と同じで儚くて、椎木はまた泣きたくなった。
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