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「それから、何? お前俺ん家何度も泊まりに来てるって? 初耳だわ」
椎木の家に行くとき、外泊をしたとき、早見の家に行くと嘘を吐いていた。心配させないように早見の家の住所や電話番号を教えていたから、今日も母は真っ先に早見に連絡をしたのだろう。おかげで、これまでの嘘がばれた。
「お前の母ちゃんにはばれないように話し合わせといたから。でもな、もし危ないことしてんだったら話合わせたりしねーぞ」
「いいよ別に。話し合わせなくても」
「ああそう。じゃあ帰ったら全部話すわ」
「ご勝手に」
冷めた声で話すキヨに、繁華街を抜けたところで早見は怒鳴る。
「おっまえほんとなんでそんな急に面倒くさくなった!? ご勝手にってなんだよ!? お前はそれで良くてもお前の母ちゃんや父ちゃんは全然良くねえだろ!!」
自分の何を知っているんだと、キヨは思う。早見とは学校以外での付き合いはない。
「うるさい」
そう言って歩き始めた。あの歩道橋に差し掛かる。一瞬躊躇うが、上っていく。上には、誰もいない。
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