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「やけになるな。自分の人生ちゃんと考えて選んで生きろ」  唐突に、背中に声をかけられて、振り返った。  静かな眼差しをした早見がいた。 「何……?」 「自分の様子がおかしくなったらそう言えって、お前がちょっと前に言ったんだろうが」  セイだ。 「しっかり飯食えって言えって。ちゃんと勉強しろって言ってくれって。意味わかんなかったけど、今言っとくわ」  セイは、自分がこうなることを予測していたのだ。だから、そうなった時に早見に自分を助けるようにと言っていた。セイが表に出続けていた一週間、キヨはすべてを伝えられていたわけではなかった。椎木に、セイは消える準備をしていたと言った。それは、こういうことだったのだ。 「やだ……っ、そんなの、早見の口から聞きたくない……!」  直接言ってよ。誰より近くにいたんだから。 「お前、自分が俺に言ったのに失礼だな」  キヨの人生を、しっかりと選んで生きろという言葉。なんて厳しい。なんて残酷な。 「守りたいものがあるよね」 「え?」 「え、って。お前がそう言えって言ったんだぞ。なんだよ、守りたいものって」  守りたいもの。そんなのセイしかいなかった。自分にはセイだけだったのだ。セイだって、そんなのわかっているはずなのに。  しかし、キヨの心に引っかかるものがある。本当に、セイだけだっただろうか。守りたい人は。
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