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 ……違う。  からかえば、すぐにむきになって反論してきた。  そのくせ、すぐに傷ついたような顔をする。年下に諭されるのが恥ずかしいと思っている頭の固い男。  黙っていれば少しだけかっこいいかもしれないが、喋れば表情がころころと変わって威厳もなにもあったものじゃない。  就職したというけど、上手くやっているだろうか。  また傷ついたり傷つけられたりしていないだろうか。  ──守りたいものができていた。作らされていたのだ。  セイは、だからきっと椎木を選んだのだ。頼りなく、だけど優しい男を、自分に残そうとした。  セイの代わりに、キヨが守りたい存在ができるように。 「なっさけなー」 「鈴原?」  誰かを守ることで、自分を許して生きることができる。面倒くさくて情けないのは、きっと自分の方だ。  キヨは何かを吹っ切るように髪を掻き上げた。 「早見……、俺、今までと性格変わると思う」 「ああ~、なんかここ数日でそんな気がしてた。こっちが素ってこと?」 「どっちが素ってこともないんだけど……」  どちらかが本物で、どちらかが偽りということもない。 「よくわかんないけど、新しいせいちゃんもよろしくねってこと?」  戯けるように小首を傾げる早見に、思わず笑ってしまう。重要な言葉を託されていたとも知らないで。
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