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椎木のキヨへの接し方は、今までと変わらないように思えた。
いつものようにキヨはソファに座り、椎木は薄いクッションを敷いて座って話をしていた。椎木が塾で働く様子も、想像できるくらいよく聞かせてくれた。きっとそこでも、良い教師なのだろうと思った。
その時間は、キヨに安らぎを与える。
「椎木」
セイとキヨを声の感じで見極めることができる椎木だから、キヨの話し方で何かを感じたのか、顔を強ばらせた。
「あなたと俺の関係は、どのようになるのでしょうね」
「え……?」
「あなたとセイは愛し合っていた。それなら、もっと時間があったなら付き合うということになったでしょう。でも俺しかいなくなった今、どういうことになるのでしょうね」
椎木は立って、キヨと並ぶようにソファに座った。困惑しているのがわかった。
「俺は……やっぱり、セイが好きだよ」
ツンと、涙の気配がした。セイを、この男は好きでいてくれる。それは嬉しくて、少し寂しい。
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