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 痛み止めを飲もうとして、切らしていることに気がついた。外に出るのも億劫だったので諦めようと思ったが、明日のために今日はぐっすり眠る必要がある。そのためにはどうしても必要に思えた。歩道橋を渡れば駅前の薬局まですぐだ。冷蔵庫も空で何か食べ物を買ってくる必要もあるし、一度外に出ようと決心する。  外に出て、もう少し厚い上着を羽織ってくればよかったと後悔した。昨日よりも確かに、冬の気配が色濃くなっている。陽が完全に沈んでしまうと、風の冷たさが身にしみた。  薬局で痛み止めを買って、コンビニで弁当と雑誌を買う。帰り道は自然と足早になる。早く家に帰りたかった。空腹も極まっていたし、風呂で早く暖まりたかった。  あの歩道橋にさしかかると、頭にはあの少年の姿が蘇る。少しの期待をして階段を上る。  ──確かに、こちらを見ていた。 「こんにちは」  微かに笑って、セイは言った。
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