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セイは青みがかった瞳を椎木に向けていた。
その瞳に映されたら心が奪われてしまうような恐怖を感じて、椎木は手を振りほどいた。
「俺のことを調べたのか!?」
やっと声を出す。
昨日、美しい幻想のように思えたセイが、今は恐ろしかった。
三ヶ月誰にも話せなかったすべてを、軽く口にされた。それも、自分の教え子と同年代に見える少年に。
「ええ、少し」
「目的は!?」
「目的って……。昨日セイに話しかけてきたのはあなたの方でしょ? この外見に惹かれたんじゃないんですか」
「違う!」
迷いなく否定した椎木を、セイは少し面白そうに笑った。
「そう。違うってセイも言ってた。でもどうかな。セイは綺麗だから」
セイが何を言っているのかわからなかった。
まるで自分のことではないように……そうかもしれない。今目の前にいるのは確かに昨日出会った少年だが、あまりに雰囲気が違う。無垢で儚げなあの少年ではない。目の前にいる少年は、明らかに椎木を見下げているし、自分の魅力を十分理解して触れてくる、無垢とは正反対なものだ。
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